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外科手術を行った原発性上皮小体機能亢進症の犬の1例

亀戸動物総合病院 池田 雄太

要約

嘔吐下痢を主訴に来院した14歳の雑種犬を諸検査により原発性上皮小体機能亢進症と診断した。症例は重度の高カルシウム血症を呈していたが、腫大した上皮小体を摘出することで血清カルシウム濃度は安定した。しかし持続していた高カルシウム血症の影響から慢性腎臓病が進行した。

はじめに

犬における高カルシウム血症の原因として、最も多いものはリンパ腫や肛門嚢アポクリン腺癌などの悪性腫瘍である。原発性上皮小体機能亢進症はその他高カルシウム血症を呈する様々な原因の中で、鑑別すべき疾患のひとつである。特徴として7歳以上の高齢犬に多く、犬種特異的にキースホンドに多発すると言われる。症状は高カルシウム血症に起因するものが多く、多飲多尿、嘔吐や下痢が多く認められる。
今回原発性上皮小体機能亢進症と診断し、上皮小体腺腫の外科摘出を行った症例において、症状の改善が認められたので報告する。

症例

14歳齢、不妊手術済み雌、雑種犬
主訴:嘔吐、下痢、食欲不振

■身体検査所見
体重:18.3kg 体温38.5℃ 四肢筋の萎縮、倦怠感および活動性低下

■臨床検査所見

診断

原発性上皮小体機能亢進症

治療と経過

 PTHおよびPTHrPの外注検査結果が出るまで、第1病日より静脈点滴および利尿剤を中心としたカルシウム降下治療を行った。またビスホスホネート製剤であるアレンドロン酸も使用した。
臨床検査にて高カルシウム血症の原因となるような悪性腫瘍や他の疾患が確認されず、またPTHが異常高値でありPTHrPが検出限界未満、イオン化Caが高値という結果より、原発性上皮小体機能亢進と診断した。診断後あらためて頚部超音波検査を行ったところ、左側甲状腺の位置に腫大した上皮小体と思われる直径約5㎜の低エコー性の腫瘤像を一つ確認した。第22病日、頚部腫瘤の詳細と他の上皮小体の状況確認を目的に頚部CT撮影を行った。CT撮影により左側甲状腺の外側に直径5.3×3.2×7.3㎜でCT値60の腫瘤性病変が確認され、総頚動脈や神経との明らかな癒着は認められなかった。また他の上皮小体は確認できなかったため単一の上皮小体のみ腫大していると診断した。
第24病日、頚部腹側正中切開による上皮小体摘出術を実施。直径約5㎜の腫大した左側内側上皮小体を確認し、左側甲状腺とともに摘出した。病理結果は上皮小体腺腫であった。
術後血清Ca値は緩徐に減少し、術後10日目に7.5mg/dlと低下したため、炭酸カルシウム製剤およびカルシトリオール製剤の内服を開始した。
その後血清Ca値は安定し、高Ca血症の際に呈していた、嘔吐下痢、食欲不振や四肢の振戦などの症状は緩和され、カルシウム製剤も漸減した。しかし、術前より高値を示していたBUN、Creの値は徐々に悪化し、慢性腎臓病の進行が認められた。

考察

臨床の現場で血清Ca値が問題となる疾患は決して多くはないと思われるが、本症例のように初診時に22.4mg/dlと重度の高カルシウム血症を呈している場合もあるため、血液スクリーニング検査項目の中にカルシウムを入れることが早期発見につながると考えられた。特に腫瘍疾患と原発性上皮小体機能亢進症はともに高齢動物に多いため、高齢動物においては必ず血清Ca値をスクリーニング項目に設定すべきだと思われた。
また血清Ca値が高い症例ほど、腎不全を併発しやすいという報告があり、本症例でも初期から現在にかけて腎パネルの悪化が認められることから、血清Ca値の上昇が軽度の段階で適切に治療ができれば腎機能障害が併発するリスクを減らすことができると考えられた。
本症例においてPTH-intactおよびPTHrP-intactの検査結果がでるまでに外注から17日間と長時間を要しており、その間初期には内科療法に反応し血清Ca値は低下していたが、後に反応性は低下し状態は悪化、ビスホスホネート製剤であるアレンドロン酸も功を奏さなかった。このような内科療法に反応性が乏しく、高カルシウム血症に対する緊急性のある症例においてはPTHなどの外注結果が出る前に、頚部超音波検査や特に頚部CT撮影によって腫大した上皮小体が確認できれば、診断および治療を含めた外科手術を試みる必要性もあるのではないかと考えられた。この点において今回行った頚部CT撮影では、術中の肉眼所見とほぼ同じで再現性の高いCT画像が描出されたため、原発性上皮小体機能亢進症の症例において頚部CT撮影は非常に有用な診断ツールの一つになるのではないかと示唆された。
(第13回 日本臨床獣医学フォーラム年次大会で発表)

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